日本競馬の根幹を支える海外血統の特徴と見分け方を徹底解説します。
馬券検討や一口馬主ライフを豊かにする血統の基礎知識を身につけましょう。
なお、日本の競馬界において、競走馬の血統は勝敗を左右する重要な要素です。
特に、現在の日本競馬の主流はサンデーサイレンス系（ヘイロー系）が占めています。
そして、その母父や祖父母の世代には、必ずと言っていいほど海外血統が深く関わっています。
この海外血統の特性を理解することは、馬の適性、すなわち芝・ダート、距離、馬場状態への対応力を正確に把握し、馬券検討などの精度を格段に向上させる鍵となります。

1. 海外血統の「大系統」とは何か？
2. 主要な海外血統とその特徴
3. 海外血統の「見分け方」
4. 海外血統が活躍する日本の名馬たち
5. よくある質問（FAQ）
6. まとめ

海外血統の「大系統」とは何か？

サラブレッドの血統を形作る「大系統」の基礎定義

サラブレッドの血統は、18世紀初頭にイギリスに輸入されたわずか3頭の始祖（バイアリーターク、ダーレーアラビアン、ゴドルフィンアラビアン）に遡ります。
そして、現代の競走馬の血統は、その子孫の中から特に成功した種牡馬を祖とする「大系統」に分類され、世界中の競馬に影響を与えています。

日本競馬において、特にその影響力が大きく、「海外血統」として重要視されるのは、以下の5つの大系統です。

米国型と欧州型の違い

海外血統の特性は、その血統が主に栄えた国や地域の競馬文化に強く影響を受けています。
大きく分けて「米国型」と「欧州型」の傾向を理解することで、馬の適性をより深く読み解くことができます。

主要な海外血統とその特徴

ここでは、日本競馬に特に大きな影響を与えている5つの主要な海外血統について、その特徴と代表的な小系統を解説します。

ノーザンダンサー系（Northern Dancer）

ノーザンダンサー系は、現代競馬において世界的に勢力を誇る大系統です。
なお、始祖ノーザンダンサーは小柄ながらも優れた競走成績を残しました。
そして、種牡馬としても空前の成功を収めました。

特徴

この系統の最大の特徴は、万能性とパワー、そしてスタミナです。
芝・ダート、短距離から長距離まで幅広い距離で活躍馬を輩出しており、総じてタフさと底力に優れています。

重馬場適性

欧州で発展した系統が多く、タフな馬場や重い芝への適性が高い傾向にあります特にサドラーズウェルズ系などの欧州型ノーザンダンサー系は、瞬発力勝負よりもスタミナとパワーが要求される馬場で強さを発揮します 。

成長・仕上がり傾向

系統全体としては万能と評されますが、欧州型は体力がつくのが遅く、古馬になってから本格化する晩成傾向が見られます。
一方で、仕上がりが早く2歳から活躍する産駒も存在し、多様な傾向を示します。

成長パターン・仕上がり時期

欧州型は晩成型で、古馬（4歳以降）での活躍が目立ちます。
ただし、ノーザンダンサー自身は仕上がりが早く、成長力も兼ね備えていました。
そのため、直系や米国型では早めの仕上がりを見せる産駒もいます。

距離

短距離戦だけでなく、中距離や時には長距離戦でも好走を見せる馬が多いです。

主な小系統と特徴

ミスタープロスペクター系（Mr. Prospector）

ミスタープロスペクター系は、米国を代表する大系統です。
また、ノーザンダンサー系と並び現代競馬の二大勢力の一つです。

特徴

この系統は、爆発的なスピードと瞬発力に優れており、特にダートや短距離で強さを発揮します。
産駒は筋肉量が豊富で、前向きな気性を持つ馬が多い傾向にあります。

重馬場適性の詳細

米国型らしくスピード能力に長けた産駒が多く、芝・ダート兼用で高速決着に強い傾向があります。
なお、重馬場適性は系統内で多様ですが、パワーに優れる産駒はダートや力の要る馬場でも対応可能です。

成長・仕上がり傾向

産駒は仕上がりが早い傾向にあるのが特徴です。
また、高いスピード能力を早期に発揮しますが、一部には早枯れの傾向が見られることもありました。
しかし、近年では多様化によりクラシックに対応する種牡馬も増えています。

成長パターン・仕上がり時期

早熟型が多い傾向にありますが、多様化により、母系の血統への注目が必要です。

距離

短中距離に強いがキングカメハメハ系は長距離も得意な馬が一定数いる。

主な小系統と特徴

ロベルト系（Roberto）

ロベルト系は、欧州血統の一つで、日本競馬において非常に重要な役割を果たしてきました。

特徴

この系統の産駒は、重厚なパワーとスタミナが特徴です。
タフな馬場や急坂のあるコース、特に中山競馬場のようなパワーを要するコースで強さを発揮する傾向があります。また、賢く聡明で落ち着いた気性の産駒が多いのも特徴です。

重馬場適性の詳細

サンデーサイレンス系が比較的不利とされる重馬場やタフな馬場で結果を出す傾向があります。
瞬発力よりもスタミナと持続力が求められる舞台、特に力の要る馬場を得意とします。

成長・仕上がり傾向

晩成傾向が強く、体力がつくのが遅いため、古馬になってから本格化するタイプが多いです。
また、底力に優れ、完成期には他の追随を許さないタフさを発揮します。

成長パターン・仕上がり時期

晩成型で、古馬（4歳以降）での本格化が一般的です。
ただし、ロベルト系の特性として、3歳春には上昇し始める産駒も存在します。

距離

中長距離が得意な産駒が多い。

主な小系統と特徴

ヘイロー系（Halo）

ヘイロー系は、米国で活躍した系統ですが、その真価は日本の競馬で発揮されました。
そして、日本の競馬を席巻した大種牡馬サンデーサイレンスの父であり、現代日本競馬の根幹を成す系統です。

特徴

ヘイロー系の最大の特徴は、爆発的な瞬発力と勝負根性、そして芝適性です。
日本の高速馬場と長い直線での「切れ味勝負」に極めて適応しており、多くのG1馬を輩出しています。

重馬場適性の詳細

この血統はパワーと持続力が強みです。
また、サンデーサイレンス系は良馬場が得意ですが、重馬場にも対応できます。
サンデーサイレンスを経由しないヘイロー系には、パワフルでタフな馬場を得意とするタイプもいます。

成長・仕上がり傾向

系統内で多様ですが、サンデーサイレンス系は特に晩成、早熟の幅が広く、5歳の春頃がピークとされることもあります。
また、成長力に優れ、長く活躍する馬を多く輩出しています。

成長パターン・仕上がり時期

成長型は配合や個体差によるところも大きいです。
仕上がりが早い早熟型の産駒も存在し、母系との配合によって傾向が大きく左右されます。

距離

芝中距離で適正のある傾向にあります。

主な小系統と特徴

ナスルーラ系（Nasrullah）

ナスルーラ系は、かつてノーザンダンサー系やミスタープロスペクター系が台頭する以前、世界を席巻した大系統の一つです。

特徴

近代競馬史を代表するスピード源です。
しかし、父系としては現在ノーザンダンサー系などに比べて勢力が縮小傾向にあります。
一方、母系やクロスとしてはなお存在感があります。
配合次第では仕上がりの良さやダッシュ力といったスピード面でのプラス材料となるケースも少なくありません。

重馬場適性の詳細

短距離戦で抜群の適性を持つ種牡馬が多い系統です。
ダート適性も高く、特にボールドルーラー系などの小系統はダートで大きな影響力を持っています。
また、重馬場適性は系統内で多様ですが、欧州型ナスルーラ系（トニービンなど）はタフな馬場での好走例が多く見られます。

成長・仕上がり傾向

系統全体としては早熟型とされることが多いですが、ボールドルーラー系は早熟、一部欧州型は晩成など、小系統によって傾向が異なります。

成長パターン・仕上がり時期

基本的には早熟型の産駒が多い傾向にあります。
しかし、欧州型ナスルーラ系は成長力に優れ、古馬になってから本格化する晩成傾向を示す場合もあります。

距離

短距離に強い傾向

主な小系統と特徴

→競馬場の特徴はこちら。

海外血統の「見分け方」

疑問：海外血統はなぜ日本の馬場に合う馬と合わない馬がいるのでしょうか？

この疑問の答えは、「競馬場の特性」と「血統の適性」のミスマッチにあります。

例えば、欧州型の血統は、起伏に富み、重い洋芝で施行される欧州のタフな競馬場で鍛えられたスタミナとパワーを伝えます。
一方、日本の競馬場は、一般的に平坦で軽く、高速決着になりやすい傾向があります。
そのため、純粋な欧州型は、日本の高速馬場での瞬発力勝負に対応できず、力を発揮しきれないことがあります。

しかし、欧州型のパワーやタフさが、日本の主流であるサンデーサイレンス系の切れ味と結びつくことで、日本のタフなコース（中山、阪神など）や重馬場で無類の強さを発揮する名馬が生まれるのです。

同様に、米国型の血統は、ダートでのスピード持続力に優れますが、芝の長距離戦ではスタミナ不足となることがあります。
このように、血統の特性が日本のレース条件とどのように作用するかを考えることが、血統を見分ける上での応用概念となります。

母父（ブルードメアサイアー）の重要性

現代の日本競馬では、父がサンデーサイレンス系である場合が多いため、母父（ブルードメアサイアー）にどのような海外血統が入っているかが、その馬の適性を判断する上で極めて重要になります。

• 母父ノーザンダンサー系（特にサドラーズウェルズ系）: 産駒にスタミナとパワーを補完し、距離延長やタフな馬場への適性を高める傾向があります。
• 母父ミスタープロスペクター系（特にキングマンボ系）: 産駒にスピードの持続力と柔軟性を与え、芝・ダート問わず優秀な産駒を出す傾向があります。
• 母父ロベルト系（特にブライアンズタイム系）: 産駒に底力とタフさを伝え、大舞台での粘り強さをもたらすことがあります。

これらの海外血統が母系に入ることで、主流血統の瞬発力に多様な適性が加わり、現代の日本競馬で活躍する競走馬が生まれているのです。

海外血統が活躍する日本の名馬たち

ここでは、主要な海外血統の特性が、日本の名馬たちにどのように現れているかを具体的に分析します。

ナリタブライアン（父：ロベルト系）

• 血統構成: 父ブライアンズタイム（ロベルト系）、母父ノーザンダンサー（ノーザンダンサー系）。
• 実績: 1994年クラシック三冠（皐月賞、ダービー、菊花賞）、有馬記念などG1・4勝。
• 特徴との一致: 父ブライアンズタイムが持つロベルト系の重厚なパワーとスタミナが、母父ノーザンダンサー系の万能性と融合しました。
  その結果、ナリタブライアンは、圧倒的なスタミナとパワーで、長距離戦やタフなレースで他馬を寄せ付けない強さを発揮しました。
  特に、菊花賞で見せた圧倒的なパフォーマンスは、ロベルト系の中長距離適正と底力が最大限に発揮された例と言えます。

ドゥラメンテ（父：ミスタープロスペクター系）

• 血統構成: 父キングカメハメハ（ミスタープロスペクター系）、母父サンデーサイレンス（ヘイロー系）。
• 実績: 2015年二冠（皐月賞、ダービー）などG1・2勝。種牡馬としてもタイトルホルダー、スターズオンアースなどを輩出。
• 特徴との一致: 父キングカメハメハが持つミスプロ系のスピードと柔軟性が、母父サンデーサイレンス系の爆発的な瞬発力と結びつきました。また、ドゥラメンテ自身は、その柔軟なバネとスピードで、日本の高速馬場に完璧に適応しました。そして、産駒にもそのスピードとパワーが伝わり、芝・ダート問わず活躍馬を輩出しており、ミスプロ系の影響力の大きさを現代に示しています。

ジャスタウェイ（母父：ミスタープロスペクター系）

• 血統構成: 父ハーツクライ（サンデーサイレンス系）、母父ワイルドアゲイン（ミスタープロスペクター系）。
• 実績: 2014年ドバイデューティフリー（G1）などG1・3勝。また、世界ランキング1位を獲得。
• 特徴との一致: 父ハーツクライのサンデーサイレンス系の切れ味に、母父ワイルドアゲインのミスプロ系のスピードとパワーが加わりました。
  よって、ジャスタウェイは日本の高速馬場だけでなく、海外のタフな馬場にも対応できるスピードの持続力とパワーを獲得しました。
  特に、ドバイでの圧勝は、海外血統のスパイスがもたらした世界的な適応力の証明と言えます。

キタサンブラック（母父：サクラバクシンオー）

• 血統構成: 父ブラックタイド（サンデーサイレンス系）、母父サクラバクシンオー（ナスルーラ系）。
• 実績: 天皇賞（春）連覇、有馬記念、ジャパンカップなどG1・7勝。
• 特徴との一致: 父ブラックタイドのサンデーサイレンス系のスタミナに、母父サクラバクシンオーが持つナスルーラ系のスピードと粘り強さが加わりました。
  なお、サクラバクシンオーは短距離馬でしたが、そのスピードの持続力がキタサンブラックの長距離での粘り強さに転化し、圧倒的なスタミナとスピードのバランスを持つ名馬となりました。
  よって父系としては衰退傾向にあるナスルーラ系が、母系として極めて重要な役割を果たした好例です。

また、キタサンブラック血統データベースはこちら。

よくある質問（FAQ)

Q. 海外血統はなぜ日本の馬場に合う馬と合わない馬がいるのでしょうか？

海外血統の特性と日本の競馬場の特性のミスマッチが原因です。
例えば、欧州型はタフな馬場でのスタミナとパワーに優れますが、日本の高速馬場での瞬発力勝負には不向きな場合があります。
しかし、そのパワーが日本の主流血統の切れ味と結びつくことで、タフなコースや重馬場で強さを発揮する馬が生まれます。

Q.「欧州型」と「米国型」の血統を見分ける最も簡単な方法は？

系統の起源と特徴で大まかに見分けられます。
例えば、欧州型はノーザンダンサー系（特にサドラーズウェルズ系）やナスルーラ系など、スタミナとパワーを重視する血統が多いです。
一方、米国型はミスタープロスペクター系やストームキャット系など、スピードとダート適性を重視する血統が多い傾向にあります。

Q. 現代の日本競馬で最も勢いのある海外血統は何ですか？

父系としてはヘイロー系（サンデーサイレンス系）が圧倒的です。
しかし、母系に入るとミスタープロスペクター系とノーザンダンサー系が二大勢力です。
特に、ミスプロ系のキングカメハメハやノーザンダンサー系の活躍馬が、現代のG1戦線を牽引しています。

Q. ダートで強い海外血統といえば、どの系統を指しますか？

ミスタープロスペクター系とノーザンダンサー系の米国で発展した小系統です。
具体的には、ミスプロ系のファピアノ系（アンブライドルド系）や、ノーザンダンサー系のストームキャット系が、日本のダート戦線で非常に強い影響力を持っています。

Q. 母父に海外血統が入るメリットは何ですか？

父系の血が持つ瞬発力やスピードに、母父の海外血統が持つスタミナ、パワー、タフさといった多様な適性を補完するメリットがあります。
よって、馬の適性の幅が広がり、特定の馬場や距離で強さを発揮する可能性が高まります。

Q. 牝馬の血統を見る際に、特に注目すべき海外血統はありますか？

ノーザンダンサー系とミスタープロスペクター系の牝馬は、繁殖牝馬として非常に優秀です。
特に、ノーザンダンサー系の牝馬は、そのタフさとスタミナを産駒に伝えます。
さらに、日本の主流血統との配合で名馬を出すケースが非常に多く、注目すべき血統です。

まとめ

要点3点

• 海外血統は日本の主流血統（サンデーサイレンス系）の「弱点」を補完するスパイス: 瞬発力にスタミナやパワー、ダート適性といった多様な能力を付加します。
  
• 「米国型」はスピードとダート、「欧州型」はスタミナとパワーが基本: 系統の起源となった国の競馬文化が、血統の特性に色濃く反映されています。
  
• 母父（ブルードメアサイアー）の海外血統が馬の適性を決定づける: 父がサンデーサイレンス系の場合、母父の海外血統がその馬の距離適性や馬場適性を判断する重要な鍵となります。

血統の知識は、馬券検討だけでなく、競走馬一頭一頭の背景にある物語を深く理解するための最高のツールです。
次にレースを見る際は、出走馬の血統表をチェックし、本記事で学んだ海外血統の特性が、その馬の走りや適性とどのように一致しているかを観察してみてください。
そうすることで、競馬はさらに奥深く、楽しいものになるでしょう。

関連記事

• 血統表の読み方ガイド
• 競走馬データベース
• 海外血統情報の最新の出走はJRA公式サイト

競馬分析専門チーム

統計・血統データ分析

✅ 専門家による監修済み

📊 データ分析に基づく予想

🔒 責任ある情報発信